矯正歯科の知識

歯の神経

歯の神経と虫歯の関係とは

歯の神経とは

歯の神経である「歯髄」には、神経の他にも血管やリンパ管、神経線維などが通っており、歯に酸素や栄養を運んだり、細菌から歯を守る免疫などの防衛反応を伝達するといった重要な役割を担っています。通常、歯の神経は、歯の表面のエナメル質とその内側にある象牙質に覆われています。

虫歯と歯の神経の関係

歯が虫歯になってしまった場合、虫歯の進行の度合いで歯の治療方法が異なります。進行によっては、歯の神経を抜かなければならない場合もあるのです。一般に虫歯の進行の度合いは、「C0~C4」に分類されます。

・C0(初期の虫歯)

歯の表面のエナメル質が白く濁ってしまい、透明感の失われた状態です。痛みなどの自覚症状はないため、歯科医院でなければ発見できない初期段階の虫歯です。

C0の治療は、適切なブラッシングと予防治療により、歯の再石灰化を促すことで、自然治癒によって治すことが可能です。

・C1(エナメル質の虫歯)

歯の表面のエナメル質が溶けて虫歯になってしまった状態です。痛みなどの自覚症状はありませんが、歯の表面が黒くなってしまいます。

C1の治療は、C0の治療と同じ処置をおこないますが、エナメル質が溶け始めているため、経過観察をおこなう必要があり、虫歯が進行する可能性が高い場合は、虫歯の患部を削ることもあります。

・C2(象牙質の虫歯)

エナメル質の内側の象牙質まで虫歯が進行してしまった状態です。歯の神経に近づくにつれて歯がしみたり、痛みを感じるようになります。柔らかい象牙質は虫歯の進行が早いため、早急に治療をおこなわない場合は、歯を大きく削ることもあります。

C2の治療は、虫歯になってしまった象牙質の患部を除去して、レジン(プラスチック)などの詰め物をします。奥歯が虫歯になった場合、削る部分も大きくなってしまう場合が多いため、その際には銀歯と呼ばれる金属を詰めます。

・C3(神経に達した虫歯)

歯の神経まで虫歯が進行してしまった状態です。何もしなくてもズキズキと激しい痛みを感じるようになります。

C3の治療は、ほとんどの場合、神経を取り除く「根管治療」をおこない、被せ物(クラウン)を被せます。

歯の神経が感染することで起こる症状

・歯髄炎

虫歯が進行して歯の神経にまで達すると歯髄炎となります。歯髄炎は冷たいものや温かいものがしみたり、何もしていなくてもズキズキと強い痛みを感じることがあります。歯の神経の炎症が元の正常な状態に回復することが可能な場合は、歯の神経を除去する必要はありませんが、回復が難しい場合は根管治療をおこなう必要があります。

・歯髄壊死

歯髄炎を放置することで歯の神経が壊死してしまうため、痛みは感じなくなります。歯の神経が死んでしまうため、歯全体が徐々に変色していきます。

・根尖性歯周炎

歯の神経が完全に壊死してしまい、炎症が歯の根の尖端まで到達して、さらに周りの骨にまで炎症が進行した状態を根尖性歯周炎といいます。虫歯の治療をおこなわずに放置してしまうことで根尖性歯周炎になってしまいますが、過去に根管治療をおこなった歯が、何らかの原因で歯根が細菌に感染してしまい、根尖性歯周炎となっていることのほうが多いことが分かっています。歯を噛むと痛んだり、歯茎から膿が出たり、たまに強い痛みを感じるなどの症状があります。

・C4(歯の根に達した虫歯)

歯の神経が死んでしまい、歯の根にまで虫歯が進行してしまった状態です。歯根先端部に膿胞ができてしまった場合は、歯を残すことは困難となるため、抜歯が必要になります。

C4の治療は、歯根を残せる場合は根管治療をおこないますが、残せない場合は、抜歯の処置をおこない、インプラントやブリッジなどの人工歯を補填する治療が必要になります。

C0~C2であれば、歯の神経は保存できますが、C3以降になってしまうと歯の神経を保存することは難しくなります。一般的に「歯の神経を抜く」という治療は、C3以降の虫歯の治療のことをいいます。

神経を抜いた歯は寿命が短くなる

虫歯などによって歯の神経を抜いた歯は、酸素や栄養などが歯に送られなくなるため、免疫力や新たな歯の組織を作る機能も失ってしまいます。そのため、歯は弱り割れやすくなり、抜歯のリスクが高くなってしまいます。さらに、痛みを感じなくなってしまうため、虫歯の再発にも気付くことが難しくなり、気付いた時には抜歯しなければいけない状態になっている場合が多いのです。歯の神経を抜くことで、歯の寿命は短くなってしまうのです。

まとめ

歯の神経は、歯を健康に保つためにとても重要です。歯の神経にまで虫歯が進行しないためにも、初期の虫歯の段階での治療が大切になります。初期の虫歯は、ご自身ではなかなか気づくことができないため、定期的に歯科医院での検診や、歯のクリーニングをおこなうようにしましょう。虫歯になってしまってからの歯科治療ではなく、虫歯になる前に予防する「予防歯科」によって、歯を健康に保つことができるため、神経を守ることにも繋がるのです。

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