歯科全般

フッ素とは

フッ素とは

フッ素は身近な自然界にある元素の一つで、お茶や魚介類など多くの食品にも含まれています。歯科においてもフッ素は大切な役割を持っており、虫歯を予防したり、丈夫な歯や骨を作る働きがあるのです。

フッ素の働き

虫歯の活動を抑制する

歯磨きで落としきれなかった歯垢(プラーク)などの細菌に含まれているミュータンス菌(虫歯菌)が作り出す酸によって、歯の表面のエナメル質からカルシウムイオンやリン酸イオンを溶かし出す「脱灰」が起こることで、歯は虫歯になってしまいます。エナメル質は、ハイドロキシアパタイトというカルシウム、リン、酸素、水素の4つの元素からできており、虫歯菌によってこれらが分解されることで歯が溶け出します。フッ素は、このエナメル質を強化することにより、虫歯に対する抵抗性を高めると共に、虫歯菌の働きを抑制することによって、酸を作りにくくさせる働きがあります。

歯の再石灰化を促す

通常、口腔内では、虫歯菌の酸によって脱灰を起こした歯の表面のエナメル質を、唾液中に含まれるカルシウムイオンやリン酸イオンが、すぐに脱灰した部分に再沈着する「歯の再石灰化」によって歯が虫歯になることを防でいるのですが、歯垢などの汚れが溜まってしまうと、口腔内が酸性に傾いてしまうことで歯の再石灰化が追いつかず、脱灰だけが進んでしまうことで虫歯になってしまいます。フッ素には、健全なエナメル部分よりも脱灰部分に多く取り込まれるという特徴を持っているため、再石灰化を促進させる効果があります。それにより、エナメル質は再び正常に修復されていくのです。

歯の質を強くすることで虫歯になりにくい歯にする

歯が顎の中で形成されていき、萌え出す頃には石灰化は完了していますが、この時期はまだ結晶構造が整っておらず隙間や不純物が多いため、萌え始めの歯ほどエナメル質は弱く虫歯になりやすいのです。さらに進行も早いため、萌え出の時期にフッ素が作用することによって、エナメル質の結晶構造も安定して整うため、歯の質が強くなるのです。歯の質を強化することで、酸に強く虫歯になりにくい歯にするといった働きがあります。

フッ素の利用方法

フッ素の利用方法には、主に3つあります。中でも特に身近なフッ素配合の歯磨き剤は、毎日使用することで口腔内にフッ素が効果的に働きます。

フッ素配合歯みがき剤

歯磨きの際にフッ素配合歯磨き剤を使用することで、ブラッシングの効果に加え、歯磨き後に口腔内の歯や粘膜に残ったフッ素が少しずつ唾液に混ざるため、効果を発揮し続けます。その際、口腔内に長時間フッ素が留まることで、虫歯予防の効果がより高まりますが、歯磨き剤の使い過ぎや、終わった後のうがいの方法に注意しましょう。歯磨き剤の使用量は、成人の場合は1~2cm(約1g)程度に、また歯磨き後のうがいは1回程度にして、量も5~15mlの水で5秒程度おこなうと効果的です。

他の磨き方には、1回目は歯磨き剤を付けなくてもよいので、十分に磨いて十分にうがいをして、2回目はフッ素配合の歯磨き剤をつけて、全部の歯に延ばすように付けて、1回吐き出し、1回だけうがいをするという「ダブルブラッシング法」という方法もあります。

フッ素塗布

歯科医院などで歯に直接フッ素を塗る方法です。定期的な歯のクリーニングの時など、年に数回塗布することで効果を発揮します。特に萌え出の頃は、歯の質が弱いため効果的です。

フッ素洗口

4歳以上からおこなうことができる、フッ素洗口液でうがいをする方法です。利用方法は1日に1回、もしくは1週間に1回おこないます。家庭でおこなう場合や、幼稚園や保育園では1日1回おこない、小中学校では1週間に1回のフッ素洗口が推奨されており、継続して使用することで予防効果を高めることができます。フッ素洗口は歯科医院、もしくは要指導医薬品取扱店で購入することができます。

フッ素を多く含む食事を摂りましょう

フッ素は、お茶、魚介類や肉類、野菜、牛乳、塩など、ほとんどの食品に含まれるミネラル成分の一つで、ビタミン類の様に毎日摂らなければならない必須の栄養素に位置付けられています。ただし、フッ素は単体では存在せず、ナトリウムと結びついた「フッ化ナトリウム」や、カルシウムと結びついた「フッ化カルシウム」などというように、必ず他の物質と結びついて存在しています。フッ素が含まれる食品を摂ることを、毎日の食事で意識することも大切です。

虫歯になりやすい人は注意しましょう

虫歯はもともとの体質や、普段の食生活の習慣、毎日の歯磨きの習慣にも影響します。

もともと口腔内に虫歯菌が多い人や、歯の質が弱い人、甘いお菓子を好んで食べる人、食事をダラダラと時間をかけて食べる人、正しい歯磨きをおこなっておらず磨き残しが多い人、口腔内の唾液の分泌量が少ない人などは、虫歯になるリスクが高くなるといわれているため、これに該当する方は特にフッ素活用をお勧めいたします。その際に、生活習慣の見直しや、歯の磨き方も見直すことが重要です。生活習慣の見直しや、正しい歯の磨き方は、歯科医院の歯のクリーニングの際に、医師や歯科衛生士から指導を受けるようにしましょう。

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